「俺を思ってしてくれたことなのに、気付かなかったのは悪かったんだけどさあ、なんていうか…」


えーと、つまり…なんて、智の口籠もる先は予測がつく。
それでも智の口から聞きたいと思うのは、我儘じゃないはず。
我儘じゃないけど、意地悪かな?


「…まぁ、私も久々に智に会えたのが嬉しくて、智が髪切ったこととか新しいシルバーリングつけてることとかに気付かなかったから、おあいこだよね」


一歩大人ぶって智より先に言ったら、智が目をまるくした。
その後、同じじゃんかって智が私を小突く。
色恋沙汰におけるエゴは相手を思うあまりのエゴ。


「…フランス、どうだった?」

「大変だったよ!最初のうちはほんと全然言葉通じねえし!…だけど、行って良かった。勉強になった」

「智は頭がいいから。きっと今年のテストも、学部で一番だよ」

「そうかあ?瑞穂だって元々頭いいし、最近かなり勉強してるから、次こそ負けちゃうかも。俺」


さっきとは打って変わって惚気合い。
そんな私達はきっと端から見たらその辺のバカップルにしか見えないけれど、どうせ誰も私達なんか見ちゃいない24時間営業のマック。




END.