「泣かないで、優理」


そういう諒も泣きそうな顔してるくせに。
そう思ったのは、そんな諒より先に私が泣いてるから。
諒の手を濡らす、その手が頬に当たる。冷たい。


「自分でも分かんないもん。ほんとは諒とは友達でいたかったのに、諒のせいだ!あんなことされたら、意識しちゃうじゃん!諒とは友達がいいからっ、好きにならないって決めてたのに!」


私は狡い。
また諒を責めるようなことを言ってる。
その自覚はあるけど、ねぇ、諒は私より大人でしょ?
ごめん、受け止めて。


「…いきなり押し倒されて、びっくりしたよな…」

「うん…」

「でも、優理も狡いよ?」

「…知ってる」


諒が濡れた手で、優しく私の髪を撫でた。
押し倒されてきっと乱れてるはず、それを丁寧に丁寧に整えるように。


「つまるところ、お互い様なんじゃね?」


諒は苦笑いを零して言った。
私は「そうかもしんない…」と呟いた。


「そんで、俺は、その…」


諒が口ごもる。
その続きに言いたいことが予想できるけど(伊達に付き合いは長くないし深くない)、諒の口から聞きたいな。
最後の我が儘。


「優理に惚れて貰ったって、自惚れてもいいのかな?」


諒が一気に真っ赤になった。