椎名さんに叩き起こされたわけじゃなくあたしは既に起きてたし、結果、シュウさんが椎名さんを引き取ったからあたしの被害は最小限で済んだから。
そういやシュウさんはどうなったんだろう。


「そうそう、鍵は見つかったんですか?」

「鞄の中に入ってた…」

「で、どんだけ飲んでたんですか?」

「解んないけど、ライブ終わってから…11時くらいから5時くらい?3、4軒回ったかも…」


通算6時間。そんだけ飲んでれば、ああなるのは仕方ない。いや仕方なくはないか。


「………確かに、派手に打ち上げしたくなるくらいいいライブでしたけどね」

「ライブ観に来てくれてたの!?」

「観に来てくれてたのって、招待してくれたの椎名さんじゃないですか」

「だって、ライブ後打ち上げに居なかったよね?」


そっか、あれだけ大きい会場だし、関係者もファンもかなり居たから、あたしなんてそうそう気付かないか。


「……あのギター弾いてたのが椎名さんだなんて、信じられないんですけどね」

「そうだねぇ、俺、最近は部屋じゃあんまりギター鳴らさないし」

「そういう意味じゃなくて」


今朝の一件も含め、あんなかっこいい人が今目の前にいる椎名さんだとは、未だに信じられずにいる。


「どうだった?ライブ」

「感動しました」


なんか釈然としないけど、これは純粋な感想。
椎名さんはあたしのその言葉にご満悦で、「ありがと」と笑った。


「またいつでも、ライブ来てよ」

「有難うございます。……そうだ」

「なに?」

「今日ね、ライブのお礼にって思って、ケーキ買ってきたんです。良かったら、貰って下さい」


本当は手作りのをあげるつもりだった。あのライブを観るまでは。