「こんな時間にですか???誰にも言わずに???」


『相模・・・。ごめんって・・・。』

私は俯いた。
正直2人に顔を見られたくなかった。
私はあの場所で涙を流してしまっていたから・・・。
きっと目が赤い・・・。
勘が鋭い2人の事・・・。すぐ気付く。

しばらくの沈黙のあと相模が口を開いた。

「謝るのならその赤く腫れた目の訳を話してください。」

ほら・・・。気付いた・・・。


『ごめん・・・。七海・・・。今日は相模の部屋で寝てくれる??
ごめんね。』


私はそう言うと2人の顔を見ることなく部屋へと足を進めた。
目にたっぷりの涙を浮かべながら。



部屋に戻るとベッドに倒れこんだ。

『・・・・・智・・・・。会いたいよ・・・。』


気付いたらそんなことを口に出していた。

今でも私の中には智ばっかりがいる。

智と出会ったころの事。

初めてのデートの時の事。

「どんな私でも愛してくれる」と言ってくれたこと。

さくらちゃんのことを話した時の智の顔・・・。

全てが思い出にならないまままだ、心に残っている。


思い出になんてしたくない。
だって思い出は幻を見るのと同じだから・・・。

自分から切り出した別れ。
お腹に宿る小さな命。

本当は別れたくなんてなかった。
でも結局私は弱かったの。

多分・・・。智の中にいる美桜さんの存在が・・・。
私の弱さが受け入れなかったんだと思う。