薄汚い洗面所の中で、
奏梧は顔を繰り返し洗っていた。

足元に転がった、
薄汚いコップを手に取ると、
それに水を注ぐ。
しばらく水を見つめて、
日向を失ったあの夜を振り返る。
振り返るたびに隠された真実を
知った今となっては
自分の馬鹿さ加減に嫌気がさした。
あの日、あのことを、
あの時なぜすぐに、
追求出来なかったかを、
それが出来ないでいた、
弱い自分を呪った。