――…


凜が生まれて、四年の月日が流れた日。

母の桜(サクラ)から、『緋桜』の話を聞いた。


『緋桜は、ある大きな桜を斬った刀なのよ』


と。

悲しげな瞳の奥には、陰がある。


『斬られた桜は、怨念から子供じゃなく若い
人間に生まれ変わった』


瞳の陰には、桜が映っていた。

大きく、凛とした桜が。


『でも、人間になった桜は、復讐の為に近付い
た男を愛してしまったの……』


前世で斬られた復讐に近付いた男に、不覚に
も恋に堕ちた。


だが、桜はそれで良かった。

復讐は何も生まないのだと、分かったから。


『凜。あなたにこの刀をあげるわ』


そっと差し出された緋桜に、凜は触れてみる。

少しだけ、温かい気がした。


『使い方を、絶対に間違っちゃ駄目だからね。
"凜とした桜"のように、生きてね……』