「凜…」


副長室を飛び出た凜は、宮部の部屋にいた。


「凜が帰るなら俺も帰るよ。副長には、そう言
ってあるんだ」


宮部はぼんやりと床を見つめる凜に優しく声
を掛けると、立ち上がった。


「行こ、松平様のとこに」

「……うん」


苦しげな笑みを浮かべて、凜も立ち上がる。

本当に、もう帰るんだ…。











「凜ちゃん」


屯所の玄関で、静かな声が聞こえた。


「……総司…」


振り返って見ると、総司はニコリと笑った。


「君と話しがしたいんだ」


最後に、と。


凜は俯いていた顔を上げた。

その笑顔から、感情は読み取れない。


「…ごめん、薫。先に行ってて」

「ん……分かった」


宮部は渋々と言うように、何度も二人を振り
返りながら歩いていった。


「ね、凜ちゃん。試合しない?」


暫く無言で見つめ合っていたが、沖田が沈黙
を破った。

凜はただ身を任せ、道場へ足を向ける。