「松平様の命は絶対だと…そう、決めていた」
でも、と続けて凜は目を伏せた。
まるで、自分を確かめるように。
「私は今、迷っている。…自分の、心に」
再び目を開いた凜は、動揺を浮かべていた。
「今日、壬生寺で芹沢さんに会った」
「芹沢さんに…?」
コクリと頷き、凜は苦笑した。
「本当に優しい人だった。子供達を見て、優し
い笑みを浮かべて…」
フッと鼻で笑い、凜は立ち上がった。
「…芹沢を斬る。これは、松平様の命だから。
それにもう、新見さんもいない」
それを聞くと、沖田は切なげに「そっか」と
呟いた。
「もう、迷わない。迷っても、私は必ず松平様に
従う。私の、道標だから…」
自分に言い聞かせるように呟くと、凜は沖田
を見た。
「…ありがとう、少し気が楽になった」
ふわりと笑顔を浮かべると、凜は部屋へ戻る。
沖田もまた、鼓動を早めながら部屋の襖を開
けたのだった。


