誠ノ桜 -桜の下で-




寝言で、途切れているが松平の名を呼んだ。


(そうだ、この子はもう帰るんだ…)


そう思い出した沖田は、締め付けられる胸に
凜を抱いた。


「土方さん。凜ちゃん寝ちゃったんで、俺達は
先に帰りますね」

「ん、あぁ…」


土方も少し酔っているのか、頬を赤く染めて
答えた。









屯所に着くと、平隊士は全員寝静まっていて
幹部達はまだ島原から帰っていなかった。

沖田は凜の部屋に布団を敷いて寝かせようと
したが、着物を掴まれていて動けない。


「凜ちゃん」


呼び掛けてみるも、離す気配がない。

だが目を覚ましたようだ。


「総司…?」


まだ酔いが覚めないようで、熱っぽい視線を
沖田に向けた。


「じゃあ…俺は部屋に「や、だ」


ムクッと起き上がり、凜は眉根を寄せる。


「一緒に…いたい」