「は?何で私が」
副長室にて、凜は不満げに声を上げた。
今日芹沢一派が島原(シマバラ)という遊郭に行
くらしい。
そこで、凜に遊女の格好をして事情を探れと
土方が言ったのだ。
「まだお前と芹沢一派は面識がねぇ。つまり、
向こうはお前を本物の遊女と思い込む」
「嫌。例えその時はばれなかったとしても、後
々面倒な事になるじゃない」
凜は正論を述べている。
だが、仮にも凜は芹沢の監視兼探りを入れる
役目を命じられている為、そう悪い話だと言
う訳でもない。
「何でそんな嫌なんだ?仕事になるだろうが」
その疑問を土方が問うと、凜は心底嫌そうに
溜め息を零した。
「遊女の格好は、前にも一度した事がある。
………だから嫌なのよ」
「要するに、恥ずかしいってか?」
凜の様子にニヤニヤしながら挑発する土方。
だが、凜は乗らなかった。