庭に、桜の木があったのだ。


しかしそこに何者かの気配を感じた。


「……誰」

「流石、鋭いみたいやな」


関西弁で陽気なノリで話し掛けてくる男は、
山崎 烝(ヤマザキ ススム)と名乗った。


「なぁ姫って呼んでも「嫌」


凜が『姫』と呼ばれるのを拒むのには、ちょ
っとした訳があった。

…本当に、ちょっとした。


「そう呼んでいいのは、松平様だけよ。あまり
気に入っていないけれど」

「気に入ってないんかい」


ビシッと突っ込む山崎を放って、凜は自室へ
戻ろうと踵を返す。


「うわ、無視?酷ーい」


何だか宮部をもっと煩くしたようだ、と溜め
息を吐きながら歩くのであった。




「あ、凜ちゃん」


廊下を曲がって出会したのは、沖田と斎藤。


「沖田と、斎藤…だっけ」

「え、呼び捨て?…なら、名前のがいいなぁ」