誠ノ桜 -桜の下で-




始まって早々、道場側の男が宮部目掛けて突
っ込んだ。

余裕で宮部が躱(カワ)し、背中を取って一本。


全く手応えが見受けられなかった。


道場主も手加減が過ぎたか、と溜め息を吐く。

次は沢井(サワイ)。

試合が始まって直ぐに、道場に別の客が来た。


「「……あ」」


壬生浪士組の副長土方 歳三(ヒジカタ トシゾウ)、
沖田、三番組組長 斎藤 一(サイトウ ハジメ)の三人
だった。


「何してるの?」

「あぁ…道場破り、かな」


凜が試合に視線を戻すと、丁度宮部が沢井に
勝った所だった。


「総司、知り合いか?」

「知らないんですか?土方さん。この子は彼の
有名な水城 凜ちゃんですよ」

「水城 凜?」

「松平公直属部隊の隊長です」


斎藤が補足すると、土方はやっとわかったよ
うであぁと頷いた。


「吉田(ヨシダ)」

「はい」


二番手も負けた道場側は、門徒の中でも強そ
うな男を出した。