誠ノ桜 -桜の下で-




「あ、凜。松平様は全く無事ですから、安心して
下さいね」

「………」


あの腹黒いと噂される沖田ですら驚く程に、
犬山は怖いらしい。


「今はとにかく、しっかり体を休めておいて下
さい。……お説教はその後です」


うっと言葉に詰まる凜。

他でもない、あの時犬山を騙して抜け出した
のだから……。


「そもそも、その傷で行こうと思うのが間違い
だったんですよ」

「ま、まぁ暁……。お説教は凜の怪我が治って
からなんでしょ?」


犬山を止めたのは、意外にも宮部だった。

宮部も犬山のように怒っていると思っていた
凜は、ちょっと驚く。


「……薫、止めるんですか」

「暁」


まだ言いたそうな犬山を制したのは、氷上だ。

こういう時氷上は父親みたいで、「ごめん」と
言って犬山は口を噤んだ。


「じゃあ、俺達は帰るよ」

「今度は抜け出しちゃ駄目ですからね」

「またな」