誠ノ桜 -桜の下で-




ムッとしていると、はたと思い出す。


「松平様は?皆は?」

「皆無事だよ。……隊士には、深手を負っ
た子もいるけど」


眉を寄せて話す総司を見て、凜は唇を噤んだ。


「……それより、凜」

「な、何…」


急に真面目な顔になったものだから、凜は何
を言われるのかと息を呑む。


「その傷、誰にやられたの」


あの日……池田屋で聞き損ねた質問だ。

凜は沖田から視線をずらし、天井を見つめた。


「……転んだ」

「そんな嘘、誰が信じると思ってんの」


沖田には池田屋内で付けられた傷ではない、
刀傷だと看破されているらしい。


「薄情しないと襲うよ」

「な…何それ、意味分かんな――」


思わず反論する凜に、沖田が馬乗りする。


「俺は構わないけど?」


危険な雰囲気を醸し出している沖田を見て、
何かを察知したらしい。

凜は慌てて口を開いた。


「長州の、奴らに……」