誠ノ桜 -桜の下で-




「……傷?傷なんてない」


凜は咄嗟にそう答えると、刀の切っ先を吉田
に向けた。


「へぇ、その傷だらけの体で俺とやり合おうっ
て?……面白いじゃん」

「誰が傷だらけよ」


凜は沖田に近付くと、後ろから引っ張った。


「ぅわっ!?」


凜はどさりと尻餅を付いた沖田の前に出て、
吉田と対峙した。


「凜ちゃ「黙って」


そう言った凜は唇を噛み締めた。


「別れ際に、もう会えないみたいに櫛なんて渡
すから…心配したじゃないっ、馬鹿総司!!」


沖田はぽかんと凜の背中を見た。

声は震えていないが、泣いているようだ。


「……泣かないでよ、俺は大丈夫だから」

「泣いてないっ!!」


そう言いながらも振り向かない凜に、沖田は
こっそり笑みを零した。


「………茶番はここまでだ」


とそこで、忘れられていた吉田が口を開く。