誠ノ桜 -桜の下で-




凜は一度目で知り、二度目の今裏庭から藩邸
を抜け出した。

幸いにも、懐に隠してあった刀と草履には気
づかれなかったようだ。

凜の部屋には『ごめん、嫌な予感がするから
行ってくる』と置き手紙を残している。


凜は痛む体で走った。

どこへ向かっているのかは、自分でも分から
ない。

今はただ、胸のざわめきのままに走った。







――池田屋

そう見えると同時ぐらいに、中から剣の音や
声が聞こえてきた。

迷う事なく飛び込むと、その惨状に息を呑む。


「……凜ちゃん!?お前、何で…」

「新八…、総司は!?」


ずっと気になっていた、総司の安否を一刻も
早く確認したい。

その一心でここまで来た。


「総司は二階だ!人手が足りねぇ、行ってやっ
てくれ!!」


永倉は鍔迫り合いになっていた相手を負かす
と、凜を送り出した。