凜もまた地を蹴り、先に正面の男を二人同時
に斬った。

そうして敵の壁から抜け出したのだ。

その速さに追いつかない男達は、振り返る前
に背中を凜に斬られる。


残り十人――…











「はぁ、はぁ、はぁ…っ」


どさっ


最後の一人が地面に倒れる。

立っているのは、凜一人だ。


だが無傷と言う訳にはいかず、深手を負わさ
れている。


「早く…松平様に……、」


無理矢理足を立たせて、何とか歩き出す。

足にも刀傷を受けているようで、思うように
足が進まない。

それでも尚一歩踏み出した時――


カツンッ…


何かが、地面にぶつかる音がした。

足元には、沖田に貰った櫛が落ちている。


見た瞬間、ドクンと心臓が嫌な音を立てた。

嫌な感じが、凜の胸を支配する。


拾い上げてみるも、櫛には特に異常はない。