とそこで、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「一君が俺に甘味を奢ってくれるとか…、どう
いう風の吹き回し?」


その声は…もう聞けないと思っていた、声。


「つべこべ言うな。あんたに聞いておきたい事
があるのだ」

「全く、一君て何考えてるか分かんないよ」

「俺は総司の方が良く分からん」


『一』『総司』

紛れも無い、斎藤と……沖田だ。


段々と近付いて来てから、声は聞こえなくな
ってきた。

凜達のいる店の向かい側の甘味処へ入ったら
しい。


無意識に、凜は手を止めていた。


「姫、どうかしたのか?」

「……いえ、何でも」


それを、宮部は黙って見ていた――…。