それから暫くして、やっと息切れが止まった私を那都がいきなり抱きしめた。


「那…都?」


やばい。
こんなに近いと私のドキドキ聞こえちゃうかも。


「悪かった。」


那都のいつもより少しかすれた声が耳元で聞こえて、私の心拍数はあり得ないくらいに上がっていった。


「怖い思いさせて…。」


「…那都が守ってくれたじゃん。
大丈夫。」


それに、逃げるなんてことプライドの高い那都じゃあり得ない。
それなのに私が居たから喧嘩は控えてくれた…。

不謹慎にも、私はそれが嬉しかった。


「バーカ。」


「は!? 今私那都にバカって言われるようなことしてないじゃん!
バカって言う方がバカなん、」


「当たり前なんだよ。」


急にムカつく発言をした那都は、今度は私の言葉にかぶって話し出した。


「…俺がお前を守るなんて、当たり前なんだよ。」


それは…、つまり


「…これからも、守ってくれるってこと?」


私がそう言うと、那都の肩がぴくっと揺れて私を抱きしめる腕に少し力が入った。


「言わせんな、バカ。」


そう言ったっきり、那都は話さなかった。

私も全く言葉を紡げずにいた…。