『珍しいな。あつしがこんな早起きするなんて』

親父が土手沿いを流れる川を見つめながら言った

何事もないように笑う親父だけど、きっと俺の行動に疑問を感じているはずだ

でも、正直に言う事なんて出来る訳がない


俺は『まぁね』と作り笑いをして返事をした

少し沈黙が続いた後、川沿いをランニングしている二人組が目に入った

見た目てきに一つか二つしか歳が変わらないような兄弟で、二人は肩を並べながら走っていた


その光景を見て俺は良く朝からジョギングする気になるな…とか、兄弟で自主トレなんて偉いな…とかそんな風にしか思わなかった


だけど、隣で見ていた親父は全く違う事を思ったみたいで

俺はその言葉に一瞬動揺してしまった


『あつしは兄弟欲しかったか?』

そう言った後の親父の横顔がなぜか寂しそうで…
俺は走り去っていく兄弟達にもう一度目を向けた


親戚の叔父さんや、飲みの席で良くそんな話をしている噂は聞くけど、直接こんな風に聞かれたのは初めてだった