おふくろから聞いた話では、親父は休みの日になると毎朝ジョギングに行くらしい

もう何年も前からみたいで、俺はそんな事全然知らなかった


親父は食事にも健康にも十分気を使っていた

なのに、後6日しか生きられないなんて…本当に信じたくない


俺はすぐさま外に飛び出し、親父が走っていると言う近所の土手へと急いだ

朝早い時間だからか人通りは少なく、親父を見つける事は難しくなかった


『親父』

見覚えのある黒いジャージ姿の人を見つけて、すぐに声をかけた


『………あつし』

ゆっくりと土手の道を走っていた足がピタリと止まった

親父はジャージの袖で汗を拭き、少し荒くなった息を整えた

普段ジャージなんて着ない親父だけど、たまに朝早く起きるとこの格好の姿を何度か見た事がある

全然気にとめていなかったけど、こうしてジョギングをしていたんだな…と思った

ひとつ屋根の下で暮らしていたのに、改めて知らない事が多すぎる


俺と親父は土手の丘に腰を下ろした

丘からは土手の周りを流れる川と、散歩をしている人達が一望(いちぼう)出来る