晩御飯を食べ終わった後、親父は縁側のいつもの位置に座っていた
庭から吹き抜けてくる風に当たりながら、チリンという風鈴の音を聞いていた
『飲む?』
俺は冷蔵庫から持ってきたサイダーの瓶を指さして聞いた
『あぁ、貰うよ』
親父はニコリと笑った
俺は栓抜きとコップを二つ手に持ち、サイダーを抱え親父の横に座った
プシュッと栓抜きをした瞬間,炭酸が外へと飛び出す音がした
シュワーっとコップにサイダーを注ぎ、親父に手渡した
親父は“ありがとう”と言いながら、ゴクリと一口飲んだ
目の前に広がる親父の自慢の庭
夜は夜で月明かりと縁側から漏れる家の明かりで少しだけ幻想的に見えた
『……手入れするの大変じゃないの?この庭』
もう親父と二人で話す事に抵抗はなく、すんなり聞きたい事が口から出てきた
『大変じゃないよ。ほとんどの木々は定期的に業者さんが手入れしてくれるし、父さんがやってる事と言えば花や緑に水をあげる事ぐらいだよ』
確かに大きな木々や綺麗に形作りになってる緑は業者がやっている
それは何回も見た事があるし、いつも同じ人だから顔馴染みでもあるけど…
花や緑に水をあげている事も俺から見れば大変そうに見えた
だって庭にはたくさんの花が植えられていて、四季折々のつぼみを付ける
その花に毎日水をあげてるのは親父で、土や肥料,花の植え替えをしてるのも親父だ
この暑い夏の間でも、汗をかきながら雑草を抜いていたりするんだから,よっぽどこの庭が大切なんだなっと思う
『…俺にも出来るかな?』
『え?』
親父の目線が俺に向いた所で、手に持っていたサイダーをゴクゴクと飲み干した
そして『ううん、なんでもないよ』と言いながら空になったコップを床に置いた