夏の鈴



もし…あれが夢じゃないとしたら、本当に俺がタイムリープしたのなら

親父は八日後もうここには居ない


そうめんをすする姿も、風鈴を眺める姿ももう見れないんだ


『………親父』

ポツリと呟いた問いかけに、親父はすぐ反応した


『どうした?あつし』

こんなやり取りでさえ、かけがえのないもののような気がしてくる


『…か………肩でも揉もうか?』

こんな言葉で、今までの時間が取り戻せるとは思わない

だけど…親父に対して今までやらなかった事をしたくなった

無性に、どうしようもなく、してあげたくなった


俺が急にこんな事を言うもんだから、親父は目を丸くさせていた

勿論、おふくろも


『どうしたの?あつしがそんな事言うなんて…。あ、あんた明日から夏休みだからお小遣いが欲しいんでしょ?』

おふくろは呆れた顔で、麦茶を一口飲んだ


おふくろがそんな風に解釈するのは分かる

だって会話すらしようとしなかった俺が、肩を揉むなんて言ってるんだから


『じゃぁ…頼む』

そんな声が聞こえてきたのはそれから数秒後

親父は箸をテーブルに置いて、ニコリと微笑んだ