「土曜日なのに学校へ行くの?」
朝早く、制服に着替えている志鶴の背中に向かって僕は言った。
「うん、ちょっとね」
その『ちょっと』って、何?
危うく口にしそうになった大人気ない言葉を、僕は飲み込んだ。
今日は君を独り占めできると思ったのに。
「航太がね、陸上の遠征でうちの学校に来るんだって」
志鶴がスカートの襞を引っ張りながら言う。
「ふうん」
僕は気のない返事をしながら、内心焦っていた。
吉川航太(よしかわ こうた)は志鶴の実家のお隣りさん。
同い年の幼なじみだ。
志鶴と仲良しなのは、彼の双子の姉、夏実(なつみ)ちゃんの方ではあるが。
実のところ、僕はこの少年が気に入らない。
朝早く、制服に着替えている志鶴の背中に向かって僕は言った。
「うん、ちょっとね」
その『ちょっと』って、何?
危うく口にしそうになった大人気ない言葉を、僕は飲み込んだ。
今日は君を独り占めできると思ったのに。
「航太がね、陸上の遠征でうちの学校に来るんだって」
志鶴がスカートの襞を引っ張りながら言う。
「ふうん」
僕は気のない返事をしながら、内心焦っていた。
吉川航太(よしかわ こうた)は志鶴の実家のお隣りさん。
同い年の幼なじみだ。
志鶴と仲良しなのは、彼の双子の姉、夏実(なつみ)ちゃんの方ではあるが。
実のところ、僕はこの少年が気に入らない。