「そんなに悲しい話なの?」

僕の問いに、志鶴は首を横に振る。

「コメディなの。とっても面白いのよ。でも時々ね、泣いちゃうくらい切ない場面があるの」


ふうん……


僕は志鶴の横に座って、話の先を促した。


志鶴曰く、

「若菜ちゃんはね、どこにでもいるような女の子なの」


は?

どこにでもいるような女の子は、自ら早朝登校して動物に餌をやったり、花壇に水撒きはしないよ。

それに、ウサギを飼ってる高校なんてあるのか?

で、その俺様な学園の王子様はなぜ早朝の音楽室でピアノを弾いているのかな? しかも窓全開で。防音設備の意味がない。

いや、好きなら好きってはっきり言えばいいのに、どうしてそう回りくどい事するんだろ?

ガキだな。