プ リ ン ス

「もっくん〜、これ全部車の中に入れて〜」


「かしこまりました。」


佐原先輩はもっくんと呼ばれた運転手に荷物を渡し、さっさと車の中に入っていった。




にしても、あの顔で“もっくん”て……。




本名が聞きたい。




そう思っていたら、もっくんさんが俺の腕から荷物を取り、車の中に入れていった。




『ありがとうございます。』


「いえ…。」


もっくんさんは表情を変えず、こくりと頷いた。




『それじゃあ俺は行きますので。』


その場を離れようと車の中にいる佐原先輩の顔を覗く。




「え?藍くんもうちに来るんだよ?」




………………………………。




『え?』


「もっくん。」


「かしこまりました。」


『は?』




もっくんは麻央に命令されると、羽藍の首に手刀を入れて意識を失わせ、車の中に担ぎいれた。




『く……そ………。』




意識を失う前に見えたのは、口角を上げ怪しげな表情を浮かべる佐原先輩の顔だった。






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