プ リ ン ス

俺の居場所は知られたら何されるかわからないからね。




「藍くんってー…なんだか金持ちのオーラがあるよね。」


唐突に佐原先輩がクスリと怪しく笑い、こっちを見て飴をガリッと噛んだ。




『そうですか?』


動揺しちゃいけない。




「なんかさ、振る舞いは優雅だし、紳士的、日本人離れした容姿。どれをとっても一般人には見えないんだよね〜」


ニコォっと笑い、ガリガリ飴を噛む先輩の姿はなんだか黒い。




「誰に頼まれたの?」


『え?』


「誰かに頼まれて龍牙に来たんじゃないの?」


『……違いますよ。』


俺は目を細めて呟いた。




「ふーん……。」


佐原先輩は、俺に怪訝な顔を向けて、飴をガリガリと噛みくだいた。




「まぁいいけどっ」


急に声のトーンを上げ、ニパッと可愛らしく笑う先輩。




さっきの黒い雰囲気とは真逆で、自分のペースを乱される。




「それより買い物に付き合ってほしいのー♪」


『買い物?』


「そう〜♪」


佐原先輩はそう言うと、俺の腕を強く引いて走り出した。




身体は小さいのに、凄い握力に脚力。
この先輩……かなり強い……。




俺は腕を引っ張られながら、佐原先輩の後ろ姿を睨みつけた。