プ リ ン ス

「ねぇ。」




声のトーンがいつもより低い佐原先輩。




俺の方を向いて、笑ってるようで笑ってない目を向ける。




「藍くんってー……何者?」


『…………は?』


唐突に佐原先輩が俺に聞いてきた。




何者……って
そんなの言えるわけない。




動揺する心を落ち着かせ、口を開いた。




『何者って……普通の高校生ですよ。』


「ふーん。」


佐原先輩はコロンと飴を転がし、つまんなそうにしている。




テンションがいつもと違うことには突っ込まないでおこう。




「じゃあなんで龍牙に来たの?」




なんでって
佐原先輩はどうしてそんな事を聞くのだろうか。




『近くだからですよ。』


「へー、前の学校はどこだったの?」


『隣県のM高です。』


とりあえず普通の公立高校から来たことにしておく。




返答に困らない為に色々用意しておいた。




もちろん校内の個人データも偽造して登録してある。




「藍くんってさー、どこに住んでるの?」


『秘密です。』


「ケチー」


ぷくぅと頬を膨らまませて、上目遣いで睨んでくる佐原先輩は正直いうと可愛い。




でも、最近学校帰りに誰かにつかれてる気配があるんだよね。




もちろん撒いてから帰ってるけど。