プ リ ン ス

放課後




「藍帰ろうぜー♪」


『あぁ。』


俺は鞄に教科書や筆記用具を入れて、チャックをしめた。




―ガラッ


「藍くーーーーん♪」


『……。』


佐原先輩がいきなり教室に入ってきて、俺の名前を大きな声で叫んだ。




佐原先輩が入ってきた瞬間、教室内にいる白のネクタイの男共が先輩に一礼した。




先輩は俺の所にトテトテと歩いてくると、俺の腕をキュッと掴んだ。




「さぁ、行くよぉーーッ♪」


『……。』


「えッ、あッ、藍!?」


俺は佐原先輩に引っ張られるまま俺は教室を後にした。




「藍ちゃーん……。」


桜井の声が虚しく教室に響いた。










陽が茜色に染まり、俺と佐原先輩の影を作る。




並木道には人が行き交い、落ち葉が前を通り過ぎる。




俺は佐原先輩の歩幅に合わせ、ゆっくりと歩く。




小さな佐原先輩が俺の横に並んでいると、恋人同士のように見られてしまう。




もちろん俺が男で。




俺が女の子の格好していたら、きっと姉弟に見えるだろう。




言いたくはないが、俺は目立つ格好をしてるし、佐原先輩は可愛い容姿をしているから、どうしても注目を浴びてしまう。




横でコロンと棒付きの飴を舐めている佐原先輩からは甘い香りがする。