スパイ・ハイスクール


「もしかして疲れてるの?」

「そんなことないですよ!大丈夫です!」


私は両手に拳を作り「元気ですよー」アピールをした。


「そう、なら良かったわ」


あ、やべ。かわいい。
かぐやさんのふんわりとした笑顔にそんなことを思ってしまった。人柄だけじゃなくこの笑顔も人気の秘訣なんだろうな......。


「ここらで一休みしましょ」


ただっぴろい校舎を歩き回った後、かぐやさんが休憩を提案してきた。

そこはたくさんの木々に囲まれて、少しだけひっそりとした所。ポツン、と1つだけベンチがある。


「ここは......?」

「私のちょっとした穴場スポット。あんまり人も来ないからお勧めなの」


そう言うと彼女はまたニコッと笑って「早く行きましょ」と私の手をひいた。


周りを見渡せば本当に人っこ1人居ない。

お嬢様たちに囲まれていた私は緊張が解けるのを感じながら、しかしかぐやさんと2人っきりというこのシチュエーションに新たな緊張を感じていた。