涙、時々ピース

「俺、邪魔にならないようにしますから…一生懸命働きますから、どうか此処で雇って下さい!」

そう言って、弘光は勢い良く頭を下げた。
俺はあまりの勢いに気圧されて、暫く呆ける。
何て見た目を裏切らない、爽やかな性格なんだ。
というより、困る。
この爽やか弘光君は、どうやらこの店を繁盛させる気のようだ。
しかし、俺は毎日それなりに生活出来るだけの収入があれば良いのだ。
よって俺は、忙しさなんぞ求めていないわけで。

「頼むよ、な、この通り!」

手を合わせて頼み込んでくる友人に、俺はまたもや深い溜め息を吐いた。
そして、未だに頭を下げたままの弘光を見る。

「仕方ないなー、もう…わかった採用。」

とうとう折れた俺が投げやりに言うと、辰巳が隠しもせずにガッツポーズ。
こいつは…、と呆れる俺の両手が、弘光に浚われた。
かと思うと、それは相手の大きな温かい手に強く握られる。

「有難うございますっ。俺、頑張りますから。」

そう言って弘光が浮かべた笑顔に、不覚にも俺の胸はきゅっと締め付けられた。