あたしと隼人はただ黙々とあたしの下駄箱の前で散らばる紙と画鋲を拾い集める。


何から話せばいいのかあたしにはわからなくて、ただ沈黙だけがその場に流れる。




大方の紙と画鋲を拾い終わったあたしは、最後の画鋲を見つけ、そっと画鋲へと手を伸ばした。


その時に同じように手を伸ばす隼人の手とあたしの手が触れた。


「あ………」


お互いに目と目を合わせ、恥ずかしさのあまり目を逸らしてしまった。


だけど、視線を逸らしてしまったのはあたしだけだったみたいで、あたしは視線を感じて目をもう1度合わせる。


すると真剣な真っ直ぐした目であたしを見つめてくる隼人。


「ごめん」


隼人はまっすぐにあたしを見つめていたかと思うと、急に目を伏せてあたしに謝ってきた。


「ホントだよね………。ホント、迷惑」


「み、美優?」


たぶん、隼人は『ううん、いいよ』という言葉を臨んでいたのかもしれない。


だけど、嘘でもそんな可愛いことなんて言えないあたし。


「隼人は女心が全然わかってないんだよ。だから、香取さんの気持ちもわかってなかった………」


隼人の香取さんに向けた言葉はすごく冷たくて、あたしはなんだか香取さんが可愛そうになってきた。


それと同時に、どうして香取さんがあんなことをしてしまったのか、そんな気持ちさえもわかってしまった。


隼人にしてみれば、自分から付き合おうと言ったわけでも付き合うことを承諾したわけでもない。


でも、香取さんはきっと、一瞬でも隼人と付き合えた感触を持ったことで、1度は断られた気持ちが見えなくなっちゃったんだ。


隼人が好きすぎて………。