「あれっ?ゆーや先生の奥さんじゃないですかー!どうぞどうぞ、座ってね」

脳外科の医局に行くと、いつも丁寧におもてなししてくれる。

脳神経外科医は女好きが多いから、と悠ちゃんは言っていた。

それって悠ちゃんも入るの?

なんて聞き返すと、あわてて補足が入ったのを覚えてる。

「これ、ホントに作ったの?」

「半分は私で、半分は母ですけど」

「すごいねぇ~」

悠ちゃんを見ると、フォーク片手に私を見ていて、目が合う。

「うまい、お店のやつみたい」

「ありがとっ」

目じりが下がって、なんていうか…幸せ顔をしていて、私も幸せになる。

「ご褒美あげる」

そう言って、白衣のポケットから何かを取り出して、私の手に押し込んだ。

これって……

「さっきMRさんにもらったボールペンでしょ!?」

「あはは、バレた?」

笑いながら私の頭をなでる。

思わずその胸に飛び込みたくなっちゃったけど、ここは医局。

おうちに帰るまでの我慢ね。

「今日は抄読会があるから、少し遅くなると思う」

「わかった。お仕事がんばってね」