冷たい雨がしとしとと降っている。

冬の雨って嫌だ。

昼でも薄暗くて、寒くて、静かで。

降るなら雪にしてほしいよね。

そんな日に限って、ホームパーティーに呼ばれる。

悠ちゃんの大学の先輩が、こっちで研究職をしているから、その繋がり。

茅島の妻として出席。

アメリカ人ってホントにパーティーするんだ…

なんて、感心してみたりして。

「妻の美波です」

「はじめまして、夫がお世話になってます」

日本人、アメリカ人関係なく笑顔を振りまいておく。

そんな中、

「美波さん、はじめまして」

ひとりでいる時に声をかけてきたのは…

黒髪のストレートが似合う、大人っぽい女性。

「茅島くんと同期だった鳴海です。今はこっちでレジデントをやってるの」

そう言って、髪を耳にかけた。

不思議。

その仕草を見て気付いた。

前にも会ったことある気がする。

「…レジデントってことは、アメリカで医師免許を?」

「ええ、日本で取った後に試験をうけて」

「へー!すごい、大変じゃなかったですか?」

「でも出題内容は日本とほぼ同じだから、試験自体はそれほど…。実際に働くほうが大変よー?」

誰だったか思い出せない。

話したこともないかもしれない。

それでも、なぜか…

心に残っている人。

誰だろう?