そして、

結婚記念日。

茅島家が揃って、レストランでお食事をすることになった。

三男の友哉くんは、久しぶりに見ると大人っぽくなっていてビックリした。

「オレね、研修医が終わったら、心臓外科に進みたいと思ってるんだ」

そんな発言をすることにもビックリするけど、お義父さんは驚くこともなく…

「もうわたしも年老いてきたせいか、許すことも覚えたみたいだ」

「ってことは、許してくれんの?」

「仕方ないだろう。友哉がやりたいようにしなさい。伊崎先生には頼んでおくから」

そう言いながら、お義父さんはワインのメニュー表と向き合っていた。

きっと、心の奥では脳外科に進んで欲しかったに違いないんだけど…

“許すことも覚えた”って。

…そういえば、浩哉くんの姿がない。

「浩哉くん、遅いんだね?」

「さっき電話したら、もうすぐ着くって言ってたよ」

「そっか…」

「美波、ロゼ飲む?」

「じゃあいただきます」

ピンクに輝く液体がグラスに注がれるのを、じっと眺める。

スパークリングワインなんだ?

シュワシュワと音を立てて、泡がキラキラ光りながら上へ昇って行く。

結婚式の夜も、悠ちゃんとシャンパンを飲んだなぁ…。

そんなことを思い出していた、そのとき。

「すみません、遅れました」

浩哉くんがやってきた。

そして、その隣には…

「鳴海さん!?」

「ご招待いただきまして、ありがとうございます」

思わず悠ちゃんを見た。

すると、悠ちゃんは“僕じゃないよ”とばかりに首を振る。

じゃあ誰が…?