君の左のポケットで~Now&Forever~


映画館を出ると、外はすっかり夜だった。


お店の灯りが通りに揺れて、歩いているヒトたちの顔を黄色く照らしている。



「腹へったな」



レンがポツリとつぶやくと、わたしのお腹もぎゅうっと鳴った。



「何か食ってくか」



そういうとレンは、すたすたと足早に歩き出した。


わたしは遅れないように、レンのシャツの裾をつかんで小走りをする。


映画館で少し休めたけれど、足はまだパンパンに張ったままだった。



「レン、ちょっと早いよお」


「あ、ごめん」



レンの歩幅が緩くなる。


通りに飾られた看板がぴかぴかと光っている。


レンの顔を見上げてみると、光に陰る顎のラインがわかる。


わたしの好きなシャープなライン。



何だかすごくカッコよく見えて、ポケットのなかではじっくり見れてたその顔を、長く見ていることができなかった。


ポケットのなかで見るときよりも全然近い位置にあるレンの顔は、もっと、ずっと、いい。


どきどきして、わたしは通りに並んだふたりの影を見つめながら、きゅっとレンのシャツの裾をつかむ手に力を込めた。