がたがたがた! と椅子を引く音がする。
「ふう」という息が聞こえると、すとんと身体が下がる。
豪快に椅子を引くこの音は、間に合ったという証拠。
レンにはいつもハラハラさせられる。
させられるというか、わたし自信が気にかけてばかりいるので、ひとりで心配してしまう。
心配するしか、わたしは他に何もできないのだけれど。
しばらくすると、ノイズの入ったマイク越しに講師の声が壁に響く。
すっと目の前が明るくなる。
かちっと音がして、ぱたんとそれより少し強めの音が耳元で聞こえて、
携帯の立てるいつものその音を聞いたあと、
かとんと置かれた机の上で、
わたしは90分、おとなしくする。

