「あのさ…」 息を殺して耳をすましていたら、レンの小さな声がした。 ソファの向こう側から聞こえる声は、しっかり耳をすまさないとよく聞こえない。 「ん?」 「名前ないと、変だよな」 「え?」 「あの、とか、おい、とか、いつまでも呼んでるわけにいかないしさ」 「…そだね」 「思い出せないんだよな?」 「…うん」 っていうか…名前なんてないんだもん。 しばらくの沈黙。