レンは、ぽかんと口を開けたままだった。 挙動不審なわたしの様子に、呆気に取られてるのかも。 手にしたマグカップから、もう少しでコーヒーが零れ落ちそうだ。 それでもかまわず、もう一度口を開く。 「レン」 好きなヒトの名前。 「レン。レン、レン」 何度も繰り返してレンの名前を呼んだ。 「…は、い」 あまりにもわたしが名前を呼ぶので、 わたしを見つめたままレンは、つられるみたいに返事をした。