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なんだか…
直後のことはよく覚えていない。
今、わたしとレンは、床にぺたりと座り込み、白いテーブルを挟んで向かい合っている。
時々、目が合って、どちらからともなく視線をそらす。
そらした視線の先のスタンドミラーに、
黒いトレーナーと白いジャージのパンツを身につけたわたしが映っていた。
首には、いつも着けていた水色のスカーフが巻きついている。
(変な格好…)
レンが貸してくれた服を着た鏡のなかのわたしは、やっぱりヒトの姿をしていた。
白いテーブルの上には、ご丁寧にコーヒーの入ったマグカップが乗っている。
これもレンが入れてくれたもの。
ゆらゆら上がる薄い湯気の先で、
レンはぽりぽりと、訳のわからないという顔をして寝癖のたった頭をかいていた。

