君の左のポケットで~Now&Forever~

レンの手のひらに包まれて見つめられるとき、わたしはまだ、きゅんとする。


撫でられると、生きていたときのことを思い出してしまう。

肌の感触や温かさ、抱きしめてくれる腕の力加減や何かを。


でも、その後のレンの穏やかな笑顔を見て、

笑い皺のできる大好きな笑顔を見て、

どうしてだろう、ほっとする。


好きな人の安心な笑顔は、心をぐっと軽くする。


ストラップに戻ってからそのことに気づいた。

どんな言葉をかけてもらえるよりも、その曇りの無い笑顔からすべてが伝わってくる。




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講義室にチャイムが響くと同時に、わたしの身体が浮き上がる。


ポケットの中に納まったわたしを連れて、いつもどおりレンは階段を駆け下りる。


まだ集配センターのバイトは再開できないレンだけれど、

最近、ユウ君と二人でお菓子屋さんの梱包のバイトを始めた。

重労働じゃないし、短期だし、リハビリも兼ねてってことでユウ君が探してきてくれたみたい。


講義が終わると待ち合わせて、二人並んで自転車をこいで、そこへ向かう。

講義内容やバイトのこと、昨日のテレビ番組のことなんかをおしゃべりしながら。


二人とも、ちゃんと笑顔で。



わたしはそんな二人を見てる。

ゆらゆら揺れながら。

穏やかな気持ちで。



レンの左のポケットで。




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「なあ、レン」


「んー?」


「もう教えてくれてもいいんじゃん?」