君の左のポケットで~Now&Forever~

わたしはユウ君の左手をそっとつかんで、自分の膝の上に置いた。



「ユウ君、もう絶対、こんなことしないで。約束して」

「ナナちゃん?」

「お願い。きっと…レンは大丈夫だから。
それに…ユウ君がいなくなったら、レンだって苦しむ」

「……」

「レンはそんなことしてもらったって、喜ばない。
だから、傍にいてあげて。逃げないで」

「ナナちゃん…」

「ね? 約束して。わたしだって、ユウ君がいなくなるなんてイヤだ。
初めてできた友達だもん。いろいろびっくりさせられたけど…ユウ君はユウ君のままで、いつまでも明るいユウ君でいて」



わたしは真っ直ぐユウ君を見つめて話した。



「今回は…チュウされそうになった時なんかと比べ物にならなかったよ。
ホント…びっくりさせられてばっかり」


そう言うと、ユウ君は苦笑した。



「あと……ケーキも。ありがとう。
あたしね、誕生日なんて祝ってもらったことなんて無いから、すごく嬉しかった。
レンもね、あんな調子だったけど、すごく喜んでた。すごく。
あたしもレンも、ユウ君のこと大好きだから」

「ナナちゃん…」

「約束して。ね?」



握り締めた左手が僅かに動いて、ユウ君は静かに頷いた。



「ごめんなナナちゃん、心配かけて……もうこんなことしない。約束するよ」

「ホントに?」

「うん」

「約束ね」

「うん」

「じゃあ、指きり」



ユウ君の左手を持ち上げて、わたしはその小指に自分の小指を絡めた。

小さく笑ったユウ君は、けれどしっかりと伝わる力強さで腕を振った。



この力強さがあれば、きっと大丈夫。

わたしは、つないだ小指からユウ君に伝わるように、

何度も「ありがとう」を繰り返した。

心の中で、何度も。