病室の窓に、わたしとユウ君が映っている。

ベッドに眠るレンの横顔も。

緑色の灯りが黒い窓に不釣合いで、わたしは静かにカーテンを引いた。


おにぎりをやっと一つ食べたわたしたちは、顔を見合わせて少し笑った。

缶コーヒーを握るユウ君の左手を見つめる。

包帯の巻かれたその腕は、胸を締め付けた。



もう絶対、そんなことはしないで。

ユウ君に買ってもらったリンゴジュースのパックを両手で包み、心の中で繰り返す。

そう、そのためにわたしは決心したんだ。

そんなことはさせない。

絶対に。


わたしは顔を上げ、ユウ君を見つめて口を開いた。



「ユウ君、ありがとね」

「ん? 何? おにぎり?」

「ふふ。まあ、そんなとこ」



ユウ君は少し不思議そうな顔をしてわたしを見て首をかしげた。

唇に、あの日のレンみたいに海苔がくっついている。

そんなユウ君が好きだ。

いつまでもそうしててもらいたい。



「あのねユウ君」

「うん?」

「あたしね…戻ろうかと思って」

「戻る? アパートに? ああそうだね、もう10時過ぎてるし」

「違うの」

「違う? って?」



わたしは俯いて、泣かないようにぎゅっと目を閉じてから、ゆっくり顔を上げた。



「帰らないと」

「どこに? 帰るってなに?」

「…よく…わかんない。できるかもできないかも」

「…ナナちゃん…大丈夫か? 疲れてるんだよ、少し眠りな」



ユウ君はわたしの肩に手をかけた。

髪を撫で、不安げな表情の眉間に皺が寄っている。