「ユウ君……!!」


わたしはしゃがみ込み、ユウ君の頬に触れた。


微かに…温かい。


何度か頬を叩いた。

傾いた首はそのままだったけれど、僅かに瞼が動いた。


まだ、間に合う。


きっと、そんなに時間は経っていない。

ユウ君が病室を後にしてから、わたしがそこを出るまでの時間も長くはなかった。


どうしたら…

どうしたらいいんだろう。


とにかく慎重に、左腕を引き上げた。

つかみ上げたユウ君の腕を、赤い血が流れ落ちる。

それはわたしの腕も伝い、バスルームの床に染みを作る。


咄嗟にポケットに手を伸ばし、スカーフを取り出した。

レンからもらった赤いスカーフ。


それをユウ君の手首に巻きつける。

流れる血は、赤いスカーフにも伝わり、色を濃くした。


バスタブの淵にユウ君の腕を固定して、リビングへ戻った。

部屋に上がりこんだとき、テーブルの上の携帯が目に入っていた。


夢中でボタンを押し、救急車を呼んだ。



お願い…!

お願い、間に合って…!



駆けつけた救急隊員の姿を目にしたわたしは、一気に身体の力が抜けていくのを感じた。


バスルームの入り口で、足元から崩れ落ちた。


ユウ君の姿と、赤いバスタブの水、慌しくけれど冷静に対処する隊員の後姿を視界に入れながら、

安心したのだろうか……わたしも、そのまま意識を失った。