君の左のポケットで~Now&Forever~

レンが病院に運ばれて、5日が過ぎた。

わたしもユウ君も、ほとんどの時間をレンの病室で過ごした。


レンは、まだ目を覚まさない。

ただ眠っているだけに見えるのに、

いくら名前を呼んでも、それには応えてくれない。


わたしもユウ君も、会話はほとんど無かった。

意識して、言葉少なだったのかもしれない。


けれど、そんなことはどうでもよかった。

目を覚まさないレンがここにいる、それだけだった。


わたしは、レンにあげた水色のお守りを握り締めていた。

毎日毎日。

レンの枕元に座って。



「レン、起きて」

「レン、あたしだよ、ナナだよ、わかる?」

「レン、今日はいいお天気でね」

「レン……」



繰り返し話しかける。

動かないレンにそっと。


だけど話しかければかけるほど、わたしの言葉だけが空しく病室に散らばった。

壁に反射さえしないその言葉たちは、

音も無く辺りに飲み込まれていく。


レンの耳に届いているとは…思えなかった。

レンは、目を覚ます気配さえ、無かった。