君の左のポケットで~Now&Forever~

その瞬間、強い力で反対側に突き飛ばされたらしい。



「きゃーー!!」

「早く! 誰か、救急車!!」



集まった人たちの大声に包まれた横断歩道。


男の子を抱えたまま振り返ったユウ君が見たものは、

横断歩道のその先に飛ばされてうつ伏せに倒れているレンだった。



「早く! 誰か!」

「動かさないほうがいい! 車、止めろ!」



ざわめくその場で、動かないレンの頭からは、赤い血が流れ出していた。


ユウ君が抱えた男の子は、ようやく我に返ったようにけたたましい声を上げて泣き出した。

泣きじゃくる男の子を胸に包んだまま、ユウ君は何が起こったのか理解した。


自動車がふたりにぶつかる寸前、自転車を投げ出したレンが歩道に飛び出し、ふたりを道の先に突き飛ばした。


けれど急ブレーキの間に合わなかった自動車は、レンの身体に強くぶつかり、横断歩道を過ぎてから静止した。



呆然としゃがみ込むユウ君、

泣きじゃくる男の子、

動かないレン。



騒然とした横断歩道に、やがて救急車がたどり着いた。


あの日の、

お母さんがレンをかばったときの、

そのときのような光景が、そこにあった。