「ナナちゃん…一緒に来てくれないか」

「…どこに?」

「…病院だよ」

「なんで?」

「何で…って…レンが…」

「もうすぐ帰ってくるよ、レン」



そう、レンは戻ってくる。

「ただいま」って。



「ナナちゃん…?」

「帰ってくるよ、もうすぐ」

「…病院なんだよ、オレのせいで…」

「違う」

「ナナちゃん」

「約束したもん」



そう、約束した。「ちゃんと待ってる」って。

ちゃんと待ってたんだ。

だから、レンもちゃんと戻ってくる。



「頼むよナナちゃん、一緒に来てくれ」

「…やだ」

「ナナちゃん…」

「どうして? 意味、わかんないよ」


ユウ君の手がわたしの肩に伸び、揺り動かされた。

「頼む」、何度かユウ君がそう言ったけれど、

わたしはしばらくの間、ユウ君の声をずっと遠くで聞きながら、立ち尽くすことしかできなかった。