君の左のポケットで~Now&Forever~

わずかにアスファルトを湿らす程度だった雨は、

午後になってその勢いを増していた。


薄暗い部屋に、遠くから聞こえる落雷の音が小さく響く。

窓を閉め切っても部屋に流れ込んでくる雨の匂いは、

得たいの知れない不安とともに、身体に絡み付いてきた。


心細さに、ソファでじっとうずくまる。

レンと一緒に暮らすようになって、初めての雨。

ベランダ越しに見る空に稲光が走り、一瞬、暗い空を切り裂いた。



「レン」


名前を呼んでも、応えてくれるヒトはもちろんいない。

でも、その名前を口に出さないと、二度と呼べなくなるような気がして、

わたしは一人、どうしようもない孤独に襲われた。


どうしてだろう……

どうしてこんなに、不安なんだろう。


それでもわたしは、

初めて一人で体験する雨と雷の音に、

少し怯えているだけだとも思っていた。