君の左のポケットで~Now&Forever~

「レン」

「ん?」

「待ってるから」

「わかったよ。どした?」

「ここで待ってるから」



靴を履いて、一段低い位置にいるレンは、

けれどわたしよりも高い視線を保って、シャツの裾をつかむわたしを見ている。



わたしの前髪をそっと上げて、額にキスをしてくれたレン。

わたしの手をシャツから離して、抱きしめてくれたレン。



「じゃ、行ってくるからな」

「…いってらっしゃい」



微笑んで、

大好きな笑顔で、

包む腕がわたしから離れる。



軽く手を振って、閉まるドアの隙間に消えるレンの姿。



「ちゃんと待ってろよ」



ぱたんとドアが閉まる直前のレンの言葉。



それが、わたしに向けられた最後の言葉になるなんて、



あの時のわたしは、知る由もなかった。