レンは、持っていたわたしの手にキスをして、ふ…と笑った。


「キーホルダーな、」

「…うん」


わたしは少し、どきっとしてレンを見る。


「あの時、お袋にもらったキーホルダー、無くなっちまったんだよ」

「…うん」

「でも」

「…うん」

「お前がいるから、いっか」

「…レン」

「いい機会なんだよな」

「……」

「吹っ切れた気がするよ」

「…うん」


レンはわたしを真っ直ぐに見つめて、それから、その腕で、包んでくれた。

優しく。

でも、力強く。



「ナナ、ありがとな」

「うん」

「ずっと、一緒にいような」

「…うん」



暗い、夜の公園。

レンは、この公園に、それでもまだ通うだろう。

けれどきっと、それはもっと別の意味で。

お母さんを探すんじゃなく、

時々、会いにくるために。



レンと、わたしの、生きている体温。



いくつもの星に見守られて、



―――わたしたちは、そっと、くちづけた。